「うちは大丈夫」が一番危ない──登録支援機関9のNGパターン
この記事の概要
- □ 事例1|「社員に行政書士がいるから、自社の入管申請業務は大丈夫」
- □ 事例2|「取次資格を持っているから、書類作成も自社で行って問題ない」
- □ 事例3|「馴染みの行政書士に取次だけお願いしているから大丈夫」
- □ 事例4|「ツールが書類を出力しているから、自社が作成しているわけではない」
- □ 事例5|「申請サポート料」「コンサルティング料」名目で、行政書士報酬とは別建てで料金を受領している
- □ 事例6|行政書士報酬に上乗せして、所属機関に請求している
- □ 事例7|申請人本人や入管法上の代理人と行政書士の面談がない
- □ 事例8|申請に関する委任契約が登録支援機関と行政書士間のみ
- □ 事例9|「入管申請業務一括代行」として、書類作成から申請まで包括的に受注している
はじめに:改正行政書士法は何を変えたのか
令和8年1月1日、改正行政書士法(令和7年法律第65号)が施行されました。本改正の核心は二つです。
第一に、第19条第1項の業務制限に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が明記されました。総務省通知(総行行第281号・令和7年6月13日)も、改正の趣旨について「『手数料』や『コンサルタント料』等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法である」という現行法の解釈を条文に明示したものと説明しています。
第二に、新たに両罰規定が整備されました。改正後行政書士法第23条の3により、第19条第1項違反等について、行為者本人に加えて、法人にも100万円以下の罰金が科され得ることとなりました。
以下、面談やコンプライアンス相談の現場でよくお伺いする9のNGパターンを整理しました。
御社の運用が1つでも該当する場合、直ちに違法と断定されるわけではありませんが、運用の再確認を強くお勧めします。
【自己診断チェックリスト】
□ 事例1|「社員に行政書士がいるから、自社の入管申請業務は大丈夫」
「当社、入管申請の経験が豊富な行政書士の方を社員として雇用しています。書類作成も社内で完結できますし、現場との連携もスムーズ。お客様にとってもコスト面で有利です」
こうした体制を組んでいる登録支援機関は少なくありません。実際、特定技能の受入れを大きく伸ばしている企業ほど、社内に専門人材を抱える傾向があります。
「そもそも資格者が社内にいるんだから、行政書士法違反になりようがない」。感覚的にはごく自然な発想です。
法的にはどう整理されているか
ただ、行政書士職務基本規則第7条第2項は、行政書士が「行政書士の身分を有したまま、団体、法人等に雇用され当該法人又は団体等に行政書士の業務を行わせてはならない」と明示的に定めています。
ここで問題とされているのは、行政書士が会社員として在籍していること自体ではなく、会社が顧客から受託した書類作成業務を、自社の従業員である行政書士に処理させる構造です。行政書士は職務基本規則第2条で「自由独立公正の立場を保持する」ことが求められており、会社の指揮命令下で会社の業務として行政書士業務を行う体制は、この職務規律と整合しないと整理されています。
この構造で業務が行われている場合、行政書士本人は同規則第7条第1項(名義貸し)・第2項違反として懲戒処分の対象となるリスクがあり、会社側も改正後行政書士法第19条第1項違反として、両罰規定により法人にも100万円以下の罰金が科される可能性があります。
関連規定
- 行政書士職務基本規則第7条第1項・第2項、第2条
- 改正後行政書士法第1条の2、第19条第1項、第21条の2、第23条の3
□ 事例2|「取次資格を持っているから、書類作成も自社で行って問題ない」
「うちは取次資格を持っているので、申請関係は一通り対応できます。書類も社内で作って、そのままオンラインで提出できますし」
こう説明する登録支援機関は珍しくありません。取次の届出も済ませて、地方入管にも認められた立場ですから、「書類作成も提出も含めて、ワンストップで対応できる」と理解するのは、業務の流れとしては自然です。
「取次の取り直しもしましたし、書類作成からオンライン申請まで全部内製しています」という説明を面談で耳にすることもあります。
法的にはどう整理されているか
ただ、登録支援機関の職員に認められている「取次」は、入管法施行規則上の申請取次制度に基づく申請書等の「提出」の代行であり、書類作成権限を含むものではないと整理されています。
入管庁自身、在留申請オンラインシステムの利用案内において「弁護士及び行政書士以外の方が、業として、申請人又はその法定代理人などから手数料を得るなどして自ら……申請情報を入力した場合、弁護士法違反又は行政書士法違反となることがありますのでご留意願います」と注意喚起しています。
日本行政書士会連合会の会長声明(平成31年3月29日付)も、登録支援機関職員の「取次」は書類の「提出」行為であり、行政書士法が規制する書類の「作成」とは区別されるべきとの見解を示しています。
つまり、取次資格があっても、報酬を得て官公署提出書類を作成する権限が登録支援機関に与えられているわけではない、というのが現在の整理です。
関連規定
- 入管法施行規則上の申請取次制度
- 入管庁オンライン申請利用案内(注意喚起)
- 日本行政書士会連合会 会長声明(平成31年3月29日付)
- 改正後行政書士法第19条第1項
□ 事例3|「馴染みの行政書士に取次だけお願いしているから大丈夫」
「うちには長年お付き合いのある先生がいて、その方に取次だけお願いしているんです。書類は社内のスタッフが慣れているので作って、最後の入管への提出だけ先生にお願いする形で」
職業紹介歴が長い登録支援機関や、長年特定技能事業を続けている企業では、こうした体制をよく耳にします。
先生もご存じの方ですし、信頼関係もある。コストも抑えられる。何より、書類作成の経験が社内にあれば、外部に頼むより早い。「先生に毎回フル稼働してもらう必要はない」という判断は、合理的にも見えます。
法的にはどう整理されているか
ただ、申請取次行政書士は、職務基本規則および各単位会の規律により、本人確認、直接依頼、不正申請の防止等について義務を負っています。
書類の内容を実質的に確認せず、第三者が作成した書類を機械的に提出するだけの運用では、行政書士側では名義貸し等の問題(職務基本規則第7条第1項)が、登録支援機関側では非行政書士による書類作成業務の問題(改正後行政書士法第19条第1項)が、それぞれ生じ得ます。
この場合、依頼している行政書士本人が懲戒処分(業務停止・業務禁止)の対象となるほか、地方出入国在留管理局長による申請取次の届出受理が取り消される可能性もあります。少なくとも入管業務の継続に重大な影響を及ぼし得る構造です。
関連規定
- 改正後行政書士法第19条第1項
- 行政書士職務基本規則第7条第1項、第29条第2項、第61条第3項
- 入管法施行規則上の申請取次制度
□ 事例4|「ツールが書類を出力しているから、自社が作成しているわけではない」
「最近は便利なシステムが出てきていまして、当社でも導入しています。情報を入力すれば、書類は自動で生成されて、そのままオンライン申請まで連携できる。スタッフの作業時間も大幅に削減できました」
こうしたDX化の流れは、登録支援機関の業界でも急速に進んでいます。
「自分たちが書類を書いているわけではなく、ツールが出力している」「うちは情報を入れているだけで、生成しているのはシステム」──こう説明されると、確かに「書類作成」とは違うようにも聞こえます。
法的にはどう整理されているか
ただ、入管庁は在留申請オンラインシステムの利用案内において「弁護士及び行政書士以外の方が、業として、申請人……から手数料を得るなどして自ら……申請情報を入力した場合、弁護士法違反又は行政書士法違反となることがあります」と注意喚起しています。
ツールを使っていること自体で適法・違法が決まるわけではなく、重要なのは誰が申請内容を判断し、誰が入力し、誰が書類を完成させているかだと整理されています。
登録支援機関の担当者が、顧客から対価を得て、申請内容を判断・入力・完成している場合には、ツールを介していたとしても書類作成行為と評価されるリスクがあります。改正後行政書士法第19条第1項「いかなる名目によるかを問わず」との関係で、慎重な検討が必要な場面です。
関連規定
- 入管庁オンライン申請利用案内(注意喚起)
- 改正後行政書士法第19条第1項
□ 事例5|「申請サポート料」「コンサルティング料」名目で、行政書士報酬とは別建てで料金を受領している
「行政書士の先生に支払う費用と、当社のサポート料は別物ですから、それぞれ別建てで請求しています」
この説明は、商慣習としてはむしろ透明性が高く、誠実な対応に見えます。「コンサル料」「申請サポート料」「書類整理料」など、名目もそれぞれ正確に記載している、という登録支援機関も多いはずです。
「むしろ何も区分せず、全部まるっと請求する方が問題でしょう」と感じる方もいるかもしれません。
法的にはどう整理されているか
ただ、総務省通知(総行行第281号・令和7年6月13日)は、改正後行政書士法第19条第1項について「『手数料』や『コンサルタント料』等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法である」と述べています。
つまり、料金の名目を分けて記載すること自体は問題ではないものの、その対価の実質が「書類作成業務の対価」と評価される場合には、名目を問わず違法となり得るとの整理がなされています。
「書類作成自体はしていない」と主張しても、単なる資料収集や事実確認の補助にとどまらず、申請書に記載すべき内容を判断し、入力し、完成させている場合には、書類作成行為と評価されるリスクがあります。改正趣旨との関係で、特に慎重な確認が必要なパターンです。
関連規定
- 改正後行政書士法第19条第1項、第21条の2、第23条の3
- 総務省通知(総行行第281号・令和7年6月13日)
□ 事例6|行政書士報酬に上乗せして、所属機関に請求している
「行政書士の先生への報酬は当社で取りまとめて、所属機関にまとめて請求しています。手間賃や紹介の手数料を少し加算する形ですね」
こうした運用は、特に複数の所属機関を抱える登録支援機関で見られるパターンです。
「先生の費用を立て替えて、当社の手間も乗せて請求するのは、商慣習としてはごく普通」「むしろ所属機関側からも、窓口を一本化してほしいと言われている」と感じる方も多いはずです。
法的にはどう整理されているか
ただ、このパターンには二段の法的リスクがあります。
第一に、行政書士本人の懲戒リスク。職務基本規則第15条第3項は、「依頼者の紹介を受けたことについて、その紹介の対価を依頼者の報酬に上乗せ」することを禁じています。
第二に、登録支援機関側の改正後行政書士法第19条違反リスク。同条第1項は「いかなる名目によるかを問わず」と規定しており、登録支援機関が行政書士報酬に上乗せした「差額」を実質的に受領している場合、それが書類作成業務の対価と評価される可能性があります。「サポート料」「事務手数料」と名目を変えても、実質的に書類作成業務の対価又は行政書士報酬の不透明な上乗せと評価される場合には、同様のリスクがあるとの整理です。
関連規定
- 改正後行政書士法第19条第1項、第23条の3
- 行政書士職務基本規則第15条第3項
- 総務省通知(総行行第281号・令和7年6月13日)
□ 事例7|申請人本人や入管法上の代理人と行政書士の面談がない
「先生には書類作成や取次をお願いしていますが、申請人本人や所属機関との面談は当社のスタッフが対応しています。先生が遠方の方ですし、毎回面談していたら時間もコストも合いません」
効率化を進めている登録支援機関では、こうした分業が定着しているケースもあります。
「面談はうちで責任を持ってやっていますし、先生には書類のチェックに集中してもらっています」というのも、業務の合理性としては理解できる説明です。
法的にはどう整理されているか
これは法令そのものの問題ではなく、行政書士職務基本規則および各単位会の規律のレベルでの問題です。ただし、規律違反は懲戒処分・申請取次の届出受理取消につながり得るため、行政書士本人にとって入管業務の継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。
職務基本規則第29条第2項は、「行政書士は、事件の受託にあたり、依頼者等が本人であることを、面談等の適切な方法により確認しなければならない」と規定しています。同規則第61条第3項は、申請取次行政書士が「申請人又は入管法上の代理人から直接依頼を受けることなく、第三者を介して依頼を受けた申請取次をしてはならない」と定めています。
申請人本人又は入管法上の代理人との直接の依頼関係・本人確認・意思確認を欠くまま、登録支援機関の担当者だけを窓口として申請取次を行う運用は、第三者介在や名義貸しと評価されるリスクがあります。
関連規定
- 行政書士職務基本規則第29条第2項、第61条第3項
- 各単位会の申請取次業務適正化委員会の留意事項・誓約書
□ 事例8|申請に関する委任契約が登録支援機関と行政書士間のみ
「行政書士の先生との取引はずっと当社経由で行っていまして、契約書も当社と先生の間で締結しています。お客様(所属機関や申請人本人)と直接契約を結ぶより、当社が窓口となる方がトラブル対応もスムーズなんです」
この運用も、商慣習としては合理的に見えます。
「契約書のフォーマットを見直したことは……正直、ない」「最初に作った形をずっと続けています」というケースもあるでしょう。
法的にはどう整理されているか
職務基本規則第61条第3項は、「申請取次行政書士は、申請人又は入管法上の代理人から直接依頼を受けることなく、第三者を介して依頼を受けた申請取次をしてはならない」と規定しています。
つまり、委任・依頼関係は、申請人本人又は当該手続における入管法上の代理人と行政書士との間で直接成立している必要があると整理されます。所属機関が常に「入管法上の代理人」に該当するとは限らないため、契約構造の確認が必要です。
各単位会の誓約書(東京都行政書士会等)も「第三者とは、申請人及び入管法上の代理人以外の者はすべて含まれます」と明記しており、登録支援機関が委任元・契約当事者となり、行政書士が登録支援機関からだけ依頼を受ける構造は、ブローカー類似と評価され、行政書士本人の懲戒対象となり得ます。
関連規定
- 行政書士職務基本規則第61条第3項
- 各単位会の誓約書
□ 事例9|「入管申請業務一括代行」として、書類作成から申請まで包括的に受注している
「うちは『書類作成からオンライン申請まで全部お任せ』のワンストップサービスをウリにしていまして、お客様にも好評です。所属機関は外国人雇用に集中していただき、申請関係は丸ごと当社が引き受ける形ですね」
登録支援機関の差別化戦略として、よく耳にする方針です。
「もちろん、書類作成自体は社内の行政書士、もしくは外注先の先生にお願いしていますので、その点も問題ありません」と説明されることもあります。
法的にはどう整理されているか
「申請書作成からオンライン申請まで全部お任せください」として包括的に受注し、対価を得ている場合、その中に官公署提出書類の作成が含まれていれば、改正後行政書士法第19条第1項違反と評価されるリスクが高くなります。改正法は「いかなる名目によるかを問わず」「業として」第1条の3に規定する業務を行うことを禁じています。
社内外の行政書士に一部を外注している場合でも、登録支援機関自身が「書類作成を含む入管申請業務」を自社サービスとして受注・請求している構造であれば、行政書士が関与していることだけで問題が解消されるわけではありません。料金の名目を「サポート料」「事務代行費」「業務委託費」に変えても、改正法の射程からは逃れられない、との整理です。
両罰規定により、法人にも100万円以下の罰金が科され得る構造になっている点も、改めて確認が必要です。
関連規定
- 改正後行政書士法第19条第1項、第21条の2、第23条の3
おわりに:1つでも該当した方へ
9項目のうち1つでもチェックがついた場合、直ちに違法と断定されるわけではありませんが、御社の入管申請業務は改正後行政書士法・職務基本規則・申請取次制度との関係で、運用の再確認が必要な状態にある可能性があります。
さらに重要なのは、御社が依頼している行政書士の先生も、同時に懲戒のリスクを負うという点です。改正法の両罰規定により、法人にも100万円以下の罰金刑が科される構造となりました。行政書士が関与している場合でも、契約主体、報酬の流れ、書類作成の実質的主体、本人確認・直接依頼の有無によっては、登録支援機関側・行政書士側の双方にリスクが残ることがあります。
「先生がOKと言ってくれている」「ツールがあるから大丈夫」「取次資格があるから大丈夫」──これらは、いずれも単独では十分な根拠になりません。契約主体、報酬の流れ、書類作成の実質的主体、本人確認・直接依頼の有無を分解して確認することが重要です。
次回以降、本稿で紹介した各事例について、1事例ずつ、より詳細な法的分析と、適法な運用への具体的な見直しの方向性を解説してまいります。「自社が該当しているかどうか正確に判断したい」「具体的にどう改めるべきか知りたい」という方は、ぜひ次回以降の配信もご覧ください。
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本稿は一般的な法令の解釈整理を目的としたものであり、個別具体的な事案に対する法的助言を構成するものではありません。具体的な対応については、貴社の顧問弁護士・行政書士にご相談ください。

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