取次資格があるから書類作成も自社でOK」は本当か──取次・作成・入力の境界線と業務設計

calendar-icon 2026/05/19

「うちは申請等取次者としての承認を受けた職員がいますので、申請関係はワンストップで対応できる体制になりました」──このような説明を、登録支援機関の経営層から商談の場で聞くことがあります。

「承認を受けているから、書類作成からオンライン申請まで全部社内で完結できる」──この理解は、業務フローとしてはごく自然に見えます。しかし、入管法施行規則上の申請取次制度と、行政書士法上の書類作成業務規制は、それぞれ別の制度・別の射程で運用されており、混同するとリスクが生じます。

本記事では、概要記事の事例2「取次資格を持っているから、書類作成も自社で行って問題ない」というケースについて、取次・作成・入力の3つの行為類型の境界を整理した上で、リスクを下げるための代替構造を3パターン併記する形で提示します。

なお、本記事では、実務上「取次資格」と呼ばれることのある、申請等取次者としての承認を受けた登録支援機関職員のケースを扱います。

ルール的にはどう整理されているか

「申請取次」と「書類作成」は、入管法と行政書士法という異なる法令に基づく別の制度です。

第一の論点:入管法施行規則上の「申請取次」とは何か

登録支援機関の職員に認められている「申請取次」は、入管法施行規則上の制度に基づき、地方出入国在留管理局長から申請等取次者として承認を受けた者が行う、申請書等の提出等を行う行為です。

入管庁の在留申請オンラインシステム利用案内では、登録支援機関の職員について、申請等取次者として承認を受けた上で、所属機関等からオンライン申請代行の依頼を受けて利用することが想定されています。

ポイント:取次として制度上認められているのは、申請書等の提出等や在留カードの受領等の局面であり、申請書類そのものを作成する権限が与えられているわけではない、という点です。

申請取次制度は、本人出頭を原則とする入管手続について、一定の者が申請人等に代わって申請書等の提出等を行うことを認める制度です。登録支援機関の職員については、特定技能制度の創設に伴い、一定の範囲で申請等取次者としての承認対象に含まれることになりました。しかし、このことは、登録支援機関に書類作成権限を付与するものではありません。

第二の論点:行政書士法上の「書類作成」

一方、改正後行政書士法第1条の3第1項は、行政書士の業務として、官公署に提出する書類等の作成を定めています。同法第19条第1項は、行政書士又は行政書士法人でない者が、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として」この業務を行うことを禁じています。

総務省通知(総行行第281号・令和7年6月13日)は、改正の趣旨について、「行政書士や行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、『手数料』や『コンサルタント料』等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示することにより、行政書士や行政書士法人でない者による違反行為の更なる抑制を図ろうとする趣旨」と説明しています。

つまり、登録支援機関が、所属機関から報酬を得て、業として在留資格申請の書類を作成する構造は、改正後行政書士法第19条第1項違反として整理される可能性があります。

第三の論点:日本行政書士会連合会の見解

日本行政書士会連合会は、平成31年3月29日付の会長声明において、登録支援機関の職員が行う「申請取次」について、申請書等の提出等を行う者として承認の対象とされたものであり、登録支援機関が報酬を得て入管提出書類を作成することは行政書士法違反であると明確に述べています。

この見解は改正前から示されてきたものであり、改正法はその解釈を条文上明確化したものです。「業界の慣行」と「規範のレベルでの評価」は別の次元の話であり、規範のレベルでは「取次≠作成」という整理が一貫して維持されてきました。

第四の論点:入管庁注意喚起における「一緒に入力」の意味

入管庁は、在留申請オンラインシステムの利用案内において、行政書士以外の利用者に対し以下のように案内しています。

弁護士及び行政書士以外の方が、業として、申請人又はその法定代理人などから手数料を得るなどして自ら在留申請オンラインシステムに申請情報を入力した場合、弁護士法違反又は行政書士法違反となることがありますのでご留意願います。弁護士及び行政書士以外の利用者が、在留申請オンラインシステムを利用する場合は、申請人や所属機関の職員と一緒に申請内容を入力するなど法違反とならないよう十分ご留意願います

この注意喚起は、二つの内容で構成されています。

一つ目は、「業として、手数料を得て、自ら入力する」ことの違法性です。登録支援機関の担当者が、所属機関から手数料を受けながら、自分自身の判断と責任で入力作業を完結させる構造が問題視されています。

二つ目は、「申請人や所属機関の職員と一緒に入力する」という、法違反とならないよう留意するための例示です。ここで重要なのは、入管庁注意喚起は「一緒に入力すれば必ず適法になる」と保証しているわけではなく、あくまで違反とならないよう留意するための一例として示されている点です。

整理すると、以下のような構造になります。

入力主体 入管庁注意喚起を踏まえた整理
登録支援機関の担当者が単独で入力 業として手数料を得て自ら入力すれば、行政書士法違反となり得る
行政書士が入力 行政書士業務として適法に行い得る
申請人本人または所属機関の職員が入力 本人・所属機関側が主体となる申請として整理し得る
申請人本人または所属機関の職員と登録支援機関の担当者が一緒に入力 実態次第で行政書士法違反リスクを下げ得るが、登録支援機関が判断・入力を実質的に代行していれば違反リスクが残る

「一緒に入力」とは形式的に画面の前に並ぶことを意味するのではなく、入力主体が申請人本人または所属機関の職員にあり、登録支援機関の担当者はその意思決定を補助する関係性を意味すると考えられます。実態として登録支援機関の担当者がすべての判断と入力を行い、申請人本人は「画面に名前があるだけ」の状態であれば、形式的に「一緒に」見えても、実質は「自ら入力」と評価されるリスクが残ります。

第五の論点:両罰規定による法人へのリスク

改正により、両罰規定が整備されました。改正後行政書士法第23条の3により、第19条第1項違反等について、行為者本人に加えて、法人にも100万円以下の罰金が科され得ます。

⚠ 注意:「取次の承認があるから書類作成もOK」という運用が違法と評価された場合、法人としての登録支援機関も処罰対象となる構造になっています。


例外的に許容される構造はあるか

「では、登録支援機関は申請関係に一切関与してはいけないのか」──ここは慎重に整理する必要があります。

ケース1:申請取次(提出)に純粋にとどまる場合

書類作成は外部の独立した行政書士事務所が完結し、登録支援機関の職員は完成した書類を入管に提出する局面のみを担う場合は、申請取次制度の本来的な使われ方に沿うものです。この構造は、登録支援機関側で書類作成行為を行わない限り、行政書士法第19条第1項の射程外となり得ます。

ケース2:登録支援機関でもある会社が、所属機関として自社雇用の外国人について申請する場合

改正後行政書士法第19条第1項は「他人の依頼を受け」が要件です。自社雇用の外国人について自ら申請を行う場合は、形式上「他人の依頼を受けて」いるとは評価されにくく、論点の射程が異なります。ただし、登録支援機関の本来業務は他社の所属機関から委託を受けることであり、自社案件は限定的です。

ケース3:申請人本人又は所属機関の職員が主体となり、登録支援機関が補助にとどまる場合

入管庁注意喚起が示す「一緒に入力する」モデルは、実態として入力主体が申請人本人または所属機関の職員にあり、登録支援機関の担当者がそれを補助する関係性が担保されている場合に成立し得るものです。この実態の担保は、契約・料金体系・業務マニュアル・操作ログ等の複合的な要素で評価されます。

「取次の承認があるから何でもできる」のではなく、取次・提出・入力補助・書類作成という行為類型ごとに、誰が主体となるかを設計し直すことが、登録支援機関に求められる対応です。


リスクを下げるための代替構造:3つのパターン

書類作成について、登録支援機関が単独で完結させない構造を整えるためには、以下の3つのパターンが考えられます。なお、いずれも形式だけでなく実態を伴うことが前提となります。

ポイント:職務基本規則第61条第3項は、申請取次行政書士が「申請人又は入管法上の代理人から直接依頼を受けることなく、第三者を介して依頼を受けた申請取次をしてはならない」と規定しています。本記事で「申請人又は入管法上の代理人」と記載するのは、この規律を踏まえた表現です。所属機関が当該手続における入管法上の代理人に該当する場合は、所属機関を含みます。

パターンA:書類作成・申請取次の双方を外部の独立行政書士事務所に依頼する

構造:書類作成も申請取次も、外部の独立行政書士事務所(または届出済みの申請取次行政書士)に依頼する構造です。申請人又は入管法上の代理人が、外部の独立行政書士事務所へ直接依頼する構造にし、登録支援機関は書類作成・申請取次の双方に踏み込まず、紹介・日程調整・資料授受の補助など連絡補助の役割にとどめます。

ただし、資料の不足判断、記載内容の選択、申請方針の判断は行政書士又は依頼者本人側で行う必要があります。登録支援機関は、行政書士の指示に基づく連絡・回収補助にとどめることが重要です。

観点 内容
メリット 構造的に最も明快で、コンプライアンスリスクが最小
デメリット 案件ごとの連携工数、連絡補助の範囲を超えないための運用設計
向く規模 申請件数が少〜中規模の登録支援機関

パターンB:書類作成は外部行政書士に依頼し、提出(取次)のみ登録支援機関が担う

構造:書類作成は外部の独立行政書士事務所が完結させ、登録支援機関の職員(申請等取次者としての承認を受けた者)は、完成した書類を入管に提出する取次の局面のみを担う構造です。これは、申請取次制度の本来的な使われ方に近い形です。

この構造では、以下の点を実態として担保することが重要です。

  • 書類作成のすべての判断(記載内容の決定、申請方針、添付書類の選定等)を行政書士が行っているか
  • 登録支援機関側で書類の修正・編集が行われていないか(誤字訂正レベルを超える修正は作成行為に該当し得る)
  • 行政書士の書類作成報酬と、登録支援機関が行う資料回収・連絡補助・提出補助等の対価が、契約・請求・会計上明確に区分されているか
  • 行政書士の報酬が、登録支援機関を経由しない透明な構造で精算されているか

⚠ 注意:登録支援機関が受領する支援委託料や補助料の中に、実質的に書類作成の対価が含まれていると評価される場合には、名目を問わず行政書士法上のリスクが残ります。改正後第19条第1項「いかなる名目によるかを問わず」との関係で慎重な確認が必要です。

観点 内容
メリット 申請等取次者としての承認を活かしつつ、書類作成の主体を行政書士に明確化できる
デメリット 書類作成と取次の境界を実態として運用する難易度、料金体系の透明化
向く規模 承認を受けた職員を確保している中規模登録支援機関

パターンC:申請人本人又は所属機関の職員がオンライン申請の主体となり、登録支援機関は操作補助・一般的な案内に徹する

構造:在留申請オンラインシステムへの入力について、申請人本人又は所属機関の職員が自ら入力内容を判断し、登録支援機関の担当者は、画面操作の補助、用語の一般的説明、必要資料の案内など、判断行為に踏み込まない範囲の補助にとどめる構造です。

ただし、申請方針の判断、記載内容の選択、理由書・説明書の作成、添付資料の法的評価などが必要となる場合には、行政書士又は弁護士に切り出す必要があります。

この構造は、「登録支援機関がオンライン入力を代行する」ものではなく、あくまで申請人本人又は所属機関が主体となるオンライン申請を、登録支援機関が補助するものです。

この構造は実態の担保が最も難しく、以下のような点が問われます。

  • 入力作業時に、申請人本人または所属機関の職員が実際に画面の前にいて、入力内容について自ら判断しているか
  • 登録支援機関の担当者が、申請内容に関する法的判断(在留資格該当性、申請理由の構成等)を行っていないか
  • 業として手数料を得て入力業務を引き受けている構造になっていないか
  • 入力主体に関する記録(操作ログ、面談記録等)が残されているか
観点 内容
メリット 申請人本人・所属機関の関与を制度的に位置づけ直すことができる
デメリット 「申請人・所属機関が主体」の実態担保が難しく、書類作成を伴う場面では別途行政書士への切り出しが必要
向く規模 所属機関側に申請業務に習熟したスタッフがいる場合

いずれのパターンを採用するかは、規模・案件数・所属機関側のリソース・コスト構造によって異なります。重要なのは、「取次の承認があるから書類作成もできる」という前提を一度立ち止まって整理し、取次・作成・入力という行為類型ごとに主体を設計し直すことです。


おわりに:取次の承認を受けた登録支援機関のチェックポイント

申請等取次者として承認を受けた職員がいて、入管申請関連業務を扱う登録支援機関の経営者・コンプライアンス担当者の方は、以下の点を改めてご確認ください。

  • 書類作成の実質的な主体は誰か
  • 申請取次(提出)と書類作成は、運用上明確に分離されているか
  • 入管庁の在留申請オンラインシステムへの入力主体は誰か(誰が画面の前で判断しているか)
  • 行政書士の関与は実質的か(形式的な確認・押印にとどまっていないか)

これらを整理した上で、必要に応じてパターンA〜Cのいずれかへの移行を検討されることをお勧めします。


取次・作成・入力の分離を仕組みで実現する

取次・書類作成・オンライン入力という3つの行為類型を、誰が主体として行うかを実態として担保するには、組織の業務マニュアルや人的管理だけでは限界があります。担当者の判断、案件ごとの個別対応、運用の属人化が積み重なると、意図せず「自ら入力」「実質的な書類作成」に踏み込んでしまうリスクが残ります。

RakuVisaは、登録支援機関・行政書士・所属機関・申請人本人の4者をシステム上で連携し、改正行政書士法に対応した業務フローをシステムとして実現しています。

  • 権限の分離が設計に組み込まれている:登録支援機関のアカウントからは事実情報の提供のみが可能で、書類の自動生成は行政書士アカウントでのみ実行可能です
  • 主体の明確化:申請人本人・所属機関・行政書士のそれぞれが、自分が判断・確認すべき項目をシステム上で明示的に処理する設計になっています
  • 証跡の自動保存:WEB面談の自動録画保存により、行政書士の判断の証跡が確保されます

ポイント:RakuVisaは産業競争力強化法に基づくグレーゾーン解消制度を通じて、総務省から「当該システムの提供は、行政書士法第1条の2第1項に規定する事務を業として取り扱ったとの評価まではされない」との回答を取得しています(令和7年2月6日付)。


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RakuVisaは行政書士が必ず介在する設計により、改正行政書士法に対応したコンプライアンス体制をシステムとして実現しています。

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