育成就労の受入れ準備チェックリスト:施行前に受入企業が確かめる要件・日本語・転籍
この記事の概要
来年の春に迎える外国人材の受入れを、技能実習と同じ段取りで考えていませんか。2027年4月1日に育成就労制度が始まると、受入企業の要件、日本語の講習、本人の意向による転籍、送出機関に払う費用の扱いが変わります。育成就労計画の認定の施行日前申請は、2026年9月1日から外国人技能実習機構で受付が始まっています。
出入国在留管理庁は2026年10月15日に「育成就労制度Q&A」を更新しました。Q&Aに書かれている内容をもとに、受入企業(育成就労実施者)が施行前に確かめておきたい項目をチェック表にまとめます。運用要領や告示で「今後示す」とされている部分は、未公表として区別しています。
施行前に抜け漏れが起きやすい3つの場面
育成就労の準備で手戻りが出やすいのは、次のような場面です。
- 技能実習の次の募集を、いつもの時期に始めたとき。1号技能実習計画の認定申請について、外国人技能実習機構は「令和9年2月までに」行うよう案内しています。入管庁のQ&Aでは、技能実習として新たに受け入れられるのは、2027年3月31日までに認定申請がされ、施行日から3か月以内(2027年6月30日まで)に開始した場合などに限られます。この時期を過ぎる受入れは、育成就労で計画を作ることになります。
- 「技能実習と同じ職種だから対象になる」と考えたとき。技能実習2号の移行対象職種のうち、クリーニング(一般家庭用)、空港グランドハンドリング、ボイラーメンテナンス(ボイラーメンテナンス作業)は、分野別運用方針で育成就労の対象外とされています。
- 受入れ後の人の動きを、技能実習の前提で見積もったとき。育成就労では、一定の要件を満たせば本人の意向による転籍が認められます。家族の帯同は原則として認められず、給与は原則として租税条約の免税の対象外になるなど、人事・給与の前提も変わります。
何を確認するか:4つの確認軸
軸1:受入企業としての要件と体制
育成就労実施者の要件は技能実習の要件を引き継いだうえで、新しい項目が加わります。Q&Aが挙げているのは、過去1年以内に責めに帰すべき事由による行方不明者を出していないこと、同種業務の労働者を自発的離職などを除いて離職させていないこと、労働・社会保険・租税の法令を守っていること、送出機関から社会通念上相当と認められる程度を超える利益の供与や供応接待を受けていないこと、雇用契約の締結時に労働条件を直接又はオンラインで説明すること、分野別協議会に加入していること、などです。
体制の面では、育成就労責任者に加えて、育成就労指導員と生活相談員にも、過去3年以内の養成講習の受講が義務付けられます。技能実習では加点の要素だった講習です。当分の間は、技能実習制度の養成講習の受講で代えられるとされています。
軸2:日本語の講習と目標
入国の時点で技能や日本語の要件はありません。ただし就労を始める前までに、A1相当以上の日本語試験に合格するか、認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受ける必要があります。3年間の目標はA2.2相当の試験への合格で、受入企業は3年間のうちにA2相当の講習を100時間以上受ける機会を用意します(A2.2相当の試験に合格した人は原則不要)。この講習の時間を労働時間として扱う義務まではないものの、費用負担を含めて育成就労実施者又は監理支援機関が必要な措置を講じる、と整理されています。
軸3:転籍と在籍期間
本人の意向による転籍は、同じ業務区分の中に限られ、分野ごとに1〜2年で定める転籍制限期間の経過、一定の技能・日本語の修得、民間の職業紹介事業者の紹介を受けていないこと、転籍先が優良な育成就労実施者であること、などが要件です。転籍先は、転籍元の初期費用のうち告示で定める額に在籍期間に応じた按分率を掛けた額を負担します。この告示は今後制定される予定です。
軸4:費用・税・家族
送出機関が本人から徴収できる費用は、月給(所定内の月額)の2か月分までです。上限を超える費用は、育成就労実施者又は監理支援機関が負担します。給与は、技能実習生と違って原則として租税条約の免税規定の対象外となり、所得税・住民税の課税対象になります。家族の帯同は原則として認められません。
育成就労の受入れ準備チェック表
入管庁のQ&A・育成就労制度のページと外国人技能実習機構の案内をもとに、受入企業が施行前に確かめる項目を並べました。「確認方法」は、社内で誰が何を見るかの目安です。
| 確認項目 | 公表資料での定め | 確認方法 |
|---|---|---|
| 対象分野・業務区分 | 分野別運用方針(2026年1月23日閣議決定)で定める。分野をまたぐ就労は不可 | 自社の業務が業務区分に入るかを分野別運用方針の資料と所管省庁の案内で照合 |
| 分野別協議会 | 育成就労実施者の加入が義務 | 加入済みか、加入手続の期間を所管省庁の案内で確認 |
| 過去1年の行方不明者・非自発的離職 | 責めに帰すべき事由による行方不明者、同種業務の労働者の離職(自発的離職等を除く)がないこと | 技能実習生の失踪記録と、同じ業務の従業員の退職理由を人事記録で確認 |
| 労働・社会保険・税 | 関係法令を遵守していること | 保険料・税の納付状況と未納の有無を経理で確認 |
| 養成講習 | 育成就労責任者・指導員・生活相談員が過去3年以内に受講(当分の間は技能実習の講習で代替可) | 3役の担当者ごとに修了証の日付を確認 |
| 受入れ人数枠 | 常勤職員数に応じた枠。1〜3年目の合計で定める。経過措置中の1号・2号技能実習生も算入 | 常勤職員数と、施行後も残る技能実習生の人数を数える |
| 日本語(就労開始前) | A1相当以上の試験合格、又は認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当100時間以上の講習 | 監理支援機関と、入国前後のどこで講習を受けるかを決める |
| 日本語(3年間) | A2相当の講習100時間以上の受講機会を提供。目標はA2.2相当の試験合格 | 講習の時間帯・費用負担・受講方法(オンラインなら双方向で同時にやり取りできることなど)を決める |
| 送出機関の費用 | 本人からの徴収は月給の2か月分まで。超える分は実施者又は監理支援機関が負担 | 送出機関との契約書で、本人負担の費目と金額を確認 |
| 推薦状 | 二国間取決めのある国(インドネシア・カンボジア・キルギス・ベトナム・ラオス)は、対象者ごとに送出国の公的機関の推薦状を申請時に提出 | 採用予定者の国籍と、推薦状の取得にかかる期間を送出機関に確認 |
| 給与の課税 | 原則として租税条約の免税の対象外。所得税・住民税の課税対象 | 給与計算の担当者に伝え、手取り額の説明資料を見直す |
ポイント:表の上半分(協議会・行方不明者・保険と税・講習)は、計画を作る前に社内で確かめられる項目です。下半分(日本語・送出費用・推薦状)は監理支援機関や送出機関との取り決めで決まるため、相手先との打合せの議題にしておくと漏れが減ります。
技能実習と育成就労:受入企業から見た主な違い
| 項目 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献(技能移転) | 人手不足分野の人材の育成・確保 |
| 計画の単位 | 1号・2号・3号の段階ごとに認定 | 区分はなく、通算3年の計画を一括で認定 |
| 本人の意向による転籍 | 認められていない(人権侵害等のやむを得ない事情による転籍のみ) | 一定の要件を満たせば同じ業務区分の中で可 |
| 監理する機関 | 監理団体 | 監理支援機関(新たな許可が必要。監理団体のままでは移行できない) |
| 講習の義務 | 指導員・生活相談員の受講は加点要素 | 責任者・指導員・生活相談員とも過去3年以内の受講が必要 |
| 特定技能1号への移行 | 2号を良好に修了すれば日本語試験を免除(技能試験は職種・作業に関連がある場合に免除) | 技能試験とA2.2相当以上の日本語試験への合格が必要 |
状況別の判断
いま技能実習生を受け入れている企業
2027年4月1日の時点で来日している技能実習生は、認定を受けた計画に沿って技能実習を続けられます。1号から2号への移行はでき、3号へ進むには、施行日の時点で2号の活動を1年以上行っていることが必要です。在籍中の実習生ごとに、2号に移った日を一覧にしておくと、3号へ進めるかどうかを早めに判断できます。経過措置中の実習生は育成就労の人数枠にも算入されるため、新しく育成就労で何人受け入れられるかもあわせて数えます。
初めて外国人材を受け入れる企業
育成就労は原則3年で特定技能1号の水準まで育てる制度で、入国時に専門性は求められません。特定技能1号で即戦力を採用するか、育成就労で育てるかは、業務区分と社内の指導体制で選ぶことになります。育成就労を選ぶ場合は、分野別協議会への加入と、3役(責任者・指導員・生活相談員)の講習受講から始めると、計画認定の準備に入りやすくなります。
大都市圏に本店がある企業
Q&Aでは、東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫の8都府県以外の道県と、8都府県の一部地域を「指定区域」としています。判断は就労先ではなく本店所在地で行います。指定区域の外にある転籍先が、指定区域の中から受け入れる転籍者は、育成就労外国人の総数の6分の1以下に抑えられます(本人意向の転籍者全体は3分の1以下)。地方の事業所で働く人を本社の名義で受け入れる計画では、この区分を先に確かめておきます。
支援を委託している登録支援機関・監理団体との関係
監理型で受け入れる場合、監理支援を担うのは主務大臣の許可を受けた監理支援機関です。いまの監理団体がそのまま監理支援機関になるわけではなく、新たに許可を受ける必要があります。許可基準には外部監査人の設置、債務超過がないこと、監理支援を行う受入れ機関が原則2者以上あることなどが加わっています。取引先の監理団体が許可の施行日前申請(2026年4月15日から受付)をしているかを、計画の相談を始める前に確かめておきます。
施行までの段取り
| 時期 | 公表されている予定 | 受入企業がすること |
|---|---|---|
| 2026年9月1日〜 | 育成就労計画の認定の施行日前申請を受付 | 協議会加入・講習受講を済ませ、監理支援機関と計画を作る |
| 2027年2月まで | 1号技能実習計画の認定申請(機構の案内) | 技能実習で受け入れる最後の募集かどうかを決める |
| 2027年3月31日 | 経過措置の対象となる技能実習の認定申請の期限 | 在籍実習生の2号移行日を一覧にし、3号移行の可否を確定 |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度の施行・受入れ開始 | 日本語講習・給与の課税・相談体制を運用に移す |
| 2027年6月30日 | 経過措置の技能実習を開始できる期限(施行日から3か月以内) | 入国の遅れで期限を過ぎそうな実習生を送出機関と確認 |
⚠ 注意:転籍のときに転籍先が負担する初期費用の額(告示)や、監理支援機関の優良要件の具体的な基準は、Q&Aの時点で「今後」とされています。他の在留資格から育成就労への変更手続の詳細も「別途お知らせ」です。未公表の部分を推測で社内規程に書き込まず、公表を待って反映してください。
RakuVisaで計画認定の書類を準備する
RakuVisaでは、監理型の育成就労計画の新規認定申請に使う申請書と参考様式を作成できます。本人向けの様式は母国語との併記に対応し、署名欄ごとの依頼や、受入企業への入力依頼もできます。特定技能で登録済みの受入企業の情報を使えるので、特定技能と育成就労を並行して扱う場合も同じ画面で進められます。電子申請の対象外で、提出は機構の地方事務所・支所への郵送です。機能の詳細は育成就労計画の認定申請をRakuVisaで:参考様式の作成・母国語併記・署名依頼にまとめています。
育成就労から特定技能1号へ移るときには、技能試験とA2.2相当以上の日本語試験への合格が必要になります。在籍期間の数え方など特定技能の在留期間の考え方は、特定技能1号の通算5年に含まれない期間と6年までの延長も参考にしてください。
おわりに:施行前に確かめたい7項目
- 自社の業務が育成就労の業務区分に入っているか(対象外の職種でないか)
- 分野別協議会に加入しているか、加入の手続をいつ始めるか
- 過去1年に、責めに帰すべき事由による行方不明者や、同種業務の労働者の非自発的な離職がないか
- 育成就労責任者・指導員・生活相談員の3役が、過去3年以内に養成講習を受けているか
- 就労開始前のA1相当の講習と、3年間のA2相当の講習を、誰がどこで用意するか
- 送出機関との契約で、本人が負担する費用が月給の2か月分以内に収まっているか
- 在籍中の技能実習生ごとに、2号に移った日と3号へ進めるかどうかを一覧にしたか
個別の受入れ計画が要件を満たすかどうかの判断や、計画認定の申請書類の作成は、育成就労・技能実習の手続に詳しい行政書士に相談してください。
参考(公的情報)
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