義務的支援10項目の記録チェックリスト:登録支援機関が残す書類と保存期間
この記事の概要
3か月前に行った定期面談の記録を、いま5分で出せるでしょうか。担当者が交代した直後や、委託元の受入企業から「定期届出の資料をそろえてほしい」と頼まれたときに、面談メモは担当者のノートに、生活オリエンテーションの確認書は紙のファイルに、相談の記録はチャットの履歴に、と散らばっていることに気づく登録支援機関は少なくありません。
義務的支援は「実施したこと」だけでなく、「実施したことを後から示せること」までが実務です。ここでは、1号特定技能外国人支援の義務的支援10項目について、実施の定め・残す記録・関係する参考様式を1枚のチェック表にまとめ、保存期間と届出の段取りまで整理します。
記録の抜け漏れが表に出る3つの場面
支援の記録が問われるのは、日々の支援の最中よりも、次のような節目です。
- 年1回の定期届出の準備:届出書の別紙に、対象期間(4月1日〜翌年3月31日)の受入れ・活動・支援の実施状況を記載します。1年分をまとめて振り返るため、途中の記録が欠けていると埋められません。
- 担当者の交代・退職:誰が、いつ、どの方法で支援したかが個人の手元にしかないと、引き継いだ担当者は過去の実施状況を確かめられません。
- 受入れが終わったあと:雇用契約が終了しても記録の保存は続きます(後述の「1年以上」)。終了した案件のファイルを先に片付けてしまうと、保存義務を満たせなくなります。
何を基準に記録を残すか:3つの確認軸
「全部残しておけば安心」と考えると、記録の作業が支援そのものを圧迫します。残す範囲は、次の3つの軸から決めると過不足が出にくくなります。
軸1:登録の要件としての保存義務
出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の21第5号は、支援業務の実施状況に係る文書を作成し、支援業務を行う事務所に、支援の対象である特定技能外国人の特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くこととしていない者を、支援体制を欠く者として挙げています。つまり、記録の作成と事務所での備置きは、登録支援機関の登録の要件(入管法第19条の26第1項第14号)に結びついています。
起算点は「支援委託契約の終了日」ではなく「外国人本人の特定技能雇用契約の終了日」である点に注意が必要です。転職や退職で雇用契約が終わった日から、少なくとも1年は記録を手元に置いておく前提で運用します。
軸2:定期届出の材料になるか
2025年4月1日施行の省令改正で、定期届出は四半期ごとから年1回に変わりました(四半期ごとの届出は2025年4月15日提出分が最後で、年1回の届出は2026年4月から始まっています)。対象期間は4月1日から翌年3月31日まで、提出期限は翌年5月31日までです。届出者は特定技能所属機関で、支援の全部を受託している登録支援機関は、参考様式第3-6号(別紙1)「特定技能外国人の受入れ・活動・支援実施状況」などの必要書類を所属機関に提供する立場になります。提出の段階で慌てないよう、別紙1に書く内容から逆算して日々の記録項目を決めておくと効率的です。
軸3:随時の届出・報告のきっかけになるか
相談対応や定期面談の中で、退職の意向や長期の欠勤、労働基準法違反の疑いなどが分かることがあります。たとえば受入れの継続が困難になった場合の届出(参考様式第3-4号)は、退職または1か月以上活動できない事由が生じた日から14日以内に所属機関が行います。登録支援機関側にも、支援計画の実施における特異事案の報告(参考様式第4-3号)があります。いつ、何を把握したかが記録に残っていれば、期限の起点を所属機関と共有できます。
義務的支援10項目の記録チェック表
出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援」のページと参考様式一覧をもとに、項目ごとの定めと残す記録をまとめました。「関係する参考様式」が空欄の項目は、第5号系の参考様式がないものです。実施日・実施者・方法・内容を支援の実施記録に残します。
| 義務的支援 | 実施の定め(公表資料) | 関係する参考様式 | 記録で確認すること |
|---|---|---|---|
| ①事前ガイダンス | 雇用契約締結後、認定証明書交付申請又は変更許可申請の前に、対面又はテレビ電話等で | 第5-9号 事前ガイダンスの確認書 | 実施日が申請日より前か。説明した項目と方法 |
| ②出入国する際の送迎 | 入国時は空港等から事業所又は住居へ。帰国時は空港の保安検査場まで同行 | ― | 日時・区間・同行者 |
| ③住居確保・生活に必要な契約支援 | 連帯保証人・社宅提供等。銀行口座・携帯電話・ライフラインの契約の案内と補助 | ― | 支援した契約の種類と日付 |
| ④生活オリエンテーション | 日本のルール・マナー、公共機関の利用方法と連絡先、災害時の対応等の説明 | 第5-8号 生活オリエンテーションの確認書 | 実施日・説明項目・本人の確認 |
| ⑤公的手続等への同行 | 必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続に同行し、書類作成を補助 | ― | 同行した手続・窓口・日付 |
| ⑥日本語学習の機会の提供 | 日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等 | ― | 案内した教室・教材と日付 |
| ⑦相談・苦情への対応 | 外国人が十分理解できる言語で対応し、内容に応じて助言・指導等 | 第5-4号 相談記録書 | 受付日・言語・内容・対応と結果 |
| ⑧日本人との交流促進 | 自治会等の地域住民との交流の場や地域の行事の案内、参加の補助 | ― | 案内した行事・参加の有無 |
| ⑨転職支援(人員整理等の場合) | 受入れ側の都合で雇用契約を解除する場合の転職先探し・推薦状の作成・求職活動のための有給休暇の付与等 | 第5-12号 転職支援実施報告書 | 解除の経緯と実施した支援の内容 |
| ⑩定期的な面談・行政機関への通報 | 支援責任者等が本人及び監督する立場の者と3か月に1回以上面談。労働基準法違反等があれば通報 | 第5-5号 定期面談報告書(1号特定技能外国人用)/第5-6号 同(監督者用) | 前回から3か月を超えていないか。本人と監督者の両方か |
ポイント:参考様式がある項目(①④⑦⑨⑩)は、様式の欄がそのまま「残すべき項目」の目安になります。様式がない項目(②③⑤⑥⑧)ほど記録が抜けやすいので、実施日・実施者・方法・内容の4点だけでも同じ形式で残すと、1年分を振り返るときに困りません。
状況別の判断:記録の持ち方をどう変えるか
委託元の受入企業が多い場合
定期届出は所属機関ごとに行うため、別紙1の材料も委託元ごとに分けて渡すことになります。記録を担当者別ではなく「所属機関 → 外国人本人 → 支援項目」の順で整理しておくと、5月の提出期限前に委託元ごとの資料を切り出しやすくなります。
支援担当者が複数いる場合
登録支援機関は、委託を受けた支援業務をさらに別の者へ委託することはできません。誰が実施したかを記録に残しておくことは、自社の担当者が実施したことを示す材料にもなります。なお、2027年4月1日施行の改正では、支援業務に従事する者を支援責任者・支援担当者に限ることなどが予定されています(出入国在留管理庁の公表資料)。今のうちから実施者の欄を必ず埋める運用にしておくと移行が楽になります。
退職・転職で雇用契約が終わった場合
雇用契約の終了日が、1年以上の保存期間の起点です。終了日と「この日まで保存」という日付を記録の表紙に書いておくと、廃棄の判断を誤りません。退職そのものの届出は所属機関が行いますが、登録支援機関が先に事情を把握した場合は、把握した日と内容を相談記録に残し、所属機関へ速やかに共有します。
受入企業が自社支援に切り替える場合
委託先の変更や自社支援への切替えは、所属機関が参考様式第3-2号(支援計画変更に係る届出書)で届け出ます。支援委託契約の終了・締結を伴う場合は、第3-3-2号(支援委託契約の終了又は締結に係る届出書)も関係します。委託が終わっても、それまでに登録支援機関が実施した支援の記録は、保存期間のあいだ自社の事務所に備えて置く必要がある点は変わりません。
次の定期届出までの段取り
現在の対象期間(2026年4月1日〜2027年3月31日)の定期届出は、2027年5月31日が提出期限です。いまから記録を整えておくと、提出前の作業は「確認」だけで済みます。
| 時期 | 登録支援機関がすること | 所属機関との分担 |
|---|---|---|
| 毎月 | 相談記録・実施記録の抜けを確認。定期面談の次回期限(前回から3か月)を確認 | 面談日程を所属機関の監督者と調整 |
| 3月末(対象期間の終わり) | 委託元ごと・本人ごとに1年分の記録がそろっているか点検 | 在籍者・退職者の一覧を所属機関と突き合わせ |
| 4月〜5月 | 参考様式第3-6号(別紙1)に必要な情報を所属機関へ提供 | 届出書の確認と提出は所属機関(5月31日まで) |
| 随時 | 退職の意向・1か月以上の活動未実施などを把握したら記録し、所属機関へ共有 | 随時届出は所属機関(第3-4号は事由発生から14日以内) |
⚠ 注意:随時届出は、登録支援機関が支援委託契約を結んでいても登録支援機関が行うことはできず、所属機関が行う必要があると出入国在留管理庁は案内しています。登録支援機関の役割は、事実の把握・記録と、所属機関への速やかな情報提供です。
RakuVisaで支援の記録と期限を一か所にまとめる
RakuVisa for TSK・RakuVisa for BIZ には、特定技能外国人の管理機能があります。チェック表の運用に関係するのは次の機能です。
- 義務的支援の実施記録:各義務的支援の実施日や方法を記録・管理できます。支援実施管理簿、相談記録書(第5-4号)、生活オリエンテーションの確認書(第5-8号)、事前ガイダンスの確認書(第5-9号)の作成に対応し、第5-8号と第5-9号はオンライン署名に対応しています。
- 在留申請以外の情報の記録:入退社・入出国の年月日、休業期間などを記録できます。雇用契約の終了日を残しておけば、保存期間の起点の確認にも使えます。
- TODO管理:任意の名称でTODOを登録でき、期限の2週間前からダッシュボードにアラートが表示されます。定期面談の次回期限や、3月末の点検を登録しておく使い方ができます。
随時届出については、随時届出機能で、登録支援機関が準備を行い、所属機関が内容の確認と書類の生成・提出を行う分担にしています。⑥日本語学習の機会の提供については、RakuVisa Academy連携で学習アカウントの発行から進捗の確認までを行えます。
おわりに:記録の点検で確かめたい6項目
- 事前ガイダンスの実施日が、認定証明書交付申請・変更許可申請の日より前になっているか
- 定期面談が、本人と監督する立場の者の両方について、前回から3か月以内に行われているか
- 参考様式のない支援(送迎・契約支援・同行・日本語学習・交流促進)にも、実施日・実施者・方法・内容が残っているか
- 記録が支援業務を行う事務所に備えてあり、担当者個人の手元だけにないか
- 雇用契約が終了した人の記録に、終了日と保存期限(1年以上)が書いてあるか
- 定期届出の別紙1に必要な情報を、委託元ごとに切り出せる形になっているか
支援計画の内容や個別の届出の要否で判断に迷う場合は、入管業務に詳しい行政書士に相談すると、所属機関とも同じ前提で話を進めやすくなります。
参考(公的情報)
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」
- 出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」
- 出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法施行規則」(第19条の21)
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について(令和9年4月1日施行)」
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